エフェライファー発信シリーズ【スナックレモネード対談企画 Vol.1】
スナックレモネード代表の谷口です。
今回、講座生が自ら取材・構成を手がけてくれた対談記事「スナックレモネード対談企画 Vol.1」を、皆さまにご紹介できることになりました。
そもそもは、私が連載を担当していた日総研の『介護人財』という雑誌で、「おせっかい協会」会長の高橋恵さんのことを取り上げたいと思ったのが始まりです。恵さんに日ごろからかわいがっていただいている、介護福祉士でありエフェライフレッスン生(以下、エフェライファー)でもある山岸さんに、インタビューをお願いしました。
ところが、届いた原稿がもう…あまりにも恵さんそのものでした。呼吸するように語られる言葉のひとつひとつが胸に迫り、もはやエフェクチュエーションや介護といった枠を超えて、ひとつの「生き方」としてのメッセージが詰まっていたのです。雑誌では文字数に限りがあり(約1500字)、この熱量をそのまま届けることが難しいと判断し、全文をこちらで掲載することにしました。
「愛あるおせっかい」が、人と人とのつながりをどう育て、生き方や介護をどう豊かにしてくれるのか――
恵さんの語る言葉に、何度も心を動かされました。読むたびに新しい発見がある、そんな対談になっています。
スナックレモネードでは、ただ知識を学ぶだけではなく、自分の言葉で発信し、社会とつながることを大切にしています。そうでなければ、「クレージーキルト」は生まれません。だからこそ、講座の中だけにとどまらず、外との接着面を広げる取り組みを続けてきました。その思いが、今回こうして形になったことを、心からうれしく思っています。ぜひご一読ください。
「愛あるおせっかい」が、人と未来を動かす力になる
聞き手:山岸明美(介護福祉士)
高橋氏は1942年生まれ、一般社団法人おせっかい協会会長。80代の現在も毎朝クラブハウスに出演。講演会、セミナーに招聘されて全国を飛び回っています。著書「幸せを呼ぶおせっかいのすすめ」(PHP 研究所)「百年人生を笑って過ごす生き方の知恵」(致知出版社)他多数
聞き手:山岸明美(介護福祉士)構成:今永理佳
----日々訪問介護をしていると、よく「今日はあなたと話したのが初めて」とか「誰も家に来ない」と言われます。でも恵さんの生活は違う。会員に自宅を開放していて、たくさんの人が出入りしています。
風邪をひいて声が出なくてもクラハの配信を続けて、そしたら全国からのど飴やマスクがジャンジャン送られてきて、近所の友人からは具だくさんのスープが届く。
そんな恵さんに、介護についてのお考えをお聞きしたいです。
■「愛あるおせっかい」を支えに、自立して生きる
私は今現在は、できるだけ介護サービスに頼らず自分で立っていたいっていう気持ちです。まあ、今元気だからそう思ってるんですけれどもね。心臓の手術もしたけど普段は忘れてる。まったく眼中にないです。一年中素足だし、薬は一切飲んでいない生活をしています。その分食事を大切にしています。
人のお世話を受けるときに不満や文句が出るうちはまだ元気。なるたけ自立して暮らすためには「愛あるおせっかい精神」で行動すること。そうすれば感謝で仲間が増えて、助け合えるのよ。
自分は「病院より美容院」を実践しているんです。これもね(と、テーマカラーのシンクに塗ったマニキュアを見せてにっこり)
感謝という字はね、「感じたことを言葉で射る」って書くでしょう。だからね、自分が感謝したらすぐにありがとうとか、嬉しさを相手に伝えて言葉を発すればいいんです。弓矢のごとくスピードが大事。言葉にしなければ伝わりません。
■家族内の「感謝の順送り」が介護の源泉
私の母親は、父親が戦死して本当に苦労して私たち三姉妹を育ててくれました。最期は妹の家で、リビングに母のベッドを置いて、家族の食事もそこで。会話で母が笑ったりして気持ちよくしていました。
自分が親に接する態度を、お子さんが見ているわけです。人間は順送りですから。
だから甥っ子たちも、ごく自然に介護に関わっていました。そうやって接すればみんな優しい気持ちになるんです。やはりふれあいが大事。それがひいては、介護する側される側の心構えに通じます。
■気持ちの覚え書を広げたい
介護に関わる人に必要なのは心。お互いが心をとけ合うような関係で、特別な技術やスキルは二の次です。
介護はお互い無理したり背伸びしたりすれば続かない。だから覚え書というか、お互いに感謝と謙虚な気持ちを持ち合いましょうねっていう一枚の紙を交わすのがいいと思う。マニュアルではなくて、あくまで心のことです。お互いこういう気持ちでやりましょうねっていうような意味合いで。
そうすればお互いに謙虚さが出るし思いやりが出るし、慮る気持ちが大事なんですよね。
壁に貼っておけばご家族も気持ちがわかるし、順送りにもつながる。自分たちもいつかお世話になる時にそういうこともわかってくる。
おせっかい協会で可愛い覚え書を作って広げたいね、全国に。
ーー覚え書っていう考えに至ったきっかけはありますか?
それはね、小さい頃から人の家で暮らして、いろんなことがありました。どうしたら相手が笑顔になるか、どうしたら怒らせないで済むか、毎日考え抜いてきたんです。そして、「おせっかい精神で、互いに慮るのが人生を豊かにする鍵だ」と思い至りました。
ーー介護の現場で、一生懸命真面目にやっている人ほど、心が折れて辞めていってしまうんです。我慢してるんですよね。我慢じゃなくてお互いが想い合えれば防げたかもしれないなって。
お金を払っているから当然っていう人もいる。感謝の心をお金で片付けたくない、気持ちで片付けたい。これがうまくいく秘訣です。夫婦関係でも家族関係でも同じです。
(恵さんは、インタビューの最初から胸元に「笑顔」という赤いバッチをつけていました)
これ?これはね、誰かにいただいたの。こういうの、介護にもいいと思うんですよね。介護する側される側が、お互いにつけておくとかね。覚え書と笑顔を交換して持っておく。これを見て、やっぱり文句を言うのをやめたりね(笑)
ーー現場での心の余裕につながりそうなアイディアですね!
■愛あるおせっかいは生きる力に
ーー先日も厚木での講演会に、友人がお母様を施設から連れてきました。どうしてもお母様に元気になってほしいということで。その方、昔自分もこういうおせっかいをしたんだ、って話した時に顔がパッと明るくなったんです。その時に、やはり誰かのお世話をするというのは、本人にとっても力になるんだなあと、いいことだなあと感じました。
人として生まれたら、お年寄りも障碍者も同じです。想いあう気持ちを養っていただきたいです。元気な時からの、人間関係の順送りがずっと繋がって、それがいい介護にも繋がって行きます。
愛あるおせっかいを心の構えにして、楽しい介護ができている仲間が全国にたくさんいますよ。そういう人たちのお話をもっとしていけたらいいね。
ーーこれからのスケジュールもお忙しいですね。名古屋の後銀座、その後は沖縄、四国……
80代になってもみんなが呼んでくださるって事はありがたいです。おせっかいでみんなが楽しくなって、つながりあって、何かあったらみんなが協力してくれるんです、それが大事なんです。私はこれからもおせっかいを世の中に広めていきますよ。